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口上
「よくぞ参られたし、我が同郷の友よ」
口が渇く、鼓動が早くなる、指先が熱くなる、胸が締め付けられる。
だというのに、視線を逸らすのは許されない。
そんな事は、絶対にしてはいけない。
「日は暮れたか? 夜は深まったか?」
夜を探しても、朝に見つかる。月を求めても、陽に拒まれる。
「時を違えれば御身を崩すぞ」
君たちが大好き。
「苦しければ、お助けいたそう。
悲しければ、御心お預かりしましょう。
辛いのならば、私が、代わって差し上げたい」
君たちのためならば、どんな辛さでも耐えていける。
「私はイトムシ、この糸で楽園へと送りましょう」
いま見送る。大好きな君を、いまからこの手で。
送る側になった僕達を、どうかその目で見つめて欲しい。
君は同じ故郷で生まれた、かけがえのない友達。
『送り』が始まる。
夜はまだ、やってはこない。
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