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信頼してますよ、神官様。仕事が早い人って嫌いじゃないよ。
で。
目覚めた現代の異世界は、進化を期待していた私にはガッカリで、六百年前とさほど変わらない中世ヨーロッパ風文明のまま。
鉄道ぐらい走らせろって思ったのは悪くない。
地球だって六百年もあれば産業革命くらいは起こってるのに、こいつらの力量はハナクソかと罵りたい。
神官に「鼻をほじるのはおやめください」と涙目で言われたので、とりあえず彼の服で指先を拭いておいた。
大丈夫、固形物はついてなかった。透明な液体。健康って素晴らしい。
話を聞き進めていると、結晶に閉じ込められたまま眠り続けていた私にあやかって、今でも百年に一度は聖女を異世界から呼んでいるという。
いい迷惑。
無責任に呼び出しておいて、眠っている事をいいことに私に責任転嫁しないでほしい。
私が勇者と共に魔王倒して以来、驚異的な魔王のような存在なんて現れないし、魔物もそれなりに鳴りを潜めているらしい。あくまで鳴りを潜めているだけであって、魔物が全く存在しないわけではない。
それにプラスして、昔から研究されてきた魔物の生態について少しずつ明らかになってきた事があるという。
異世界のどこにでも突如として現れる「濁」という、黒紫のモヤッとした雲のようなゴミみたいなもの。
その集合体が魔物になるという研究結果が発表されたことにより、「濁」を浄化する必要が出てきたのだという。
確かにそれは私が聖女をしていた頃には発表されていなかった内容だ。
ただし、旅の途中でそのモヤッとしたものは見かけた事があったので、道すがら浄化した事はある。
だって、なんかうにょうにょ動いて気持ち悪かったし。
研究者の子孫らしい人がドヤ顔で教えてくれた事に対して、「ああ、アレ名前付いたんだ」って返答したらめっちゃショックな顔された。
え? 何? 何か悪い事言った?
後で聞いたら、その研究のおかげで爵位を賜ったらしい研究者。それが一族の誇りだったらしい子孫を大層傷つけたらしい。
うわっ、知らねぇえええぇ。
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