行きたかった

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ゆれる電車の中。俺は堂々と座席の真ん中にすわり、イヤホンをポケットから取り出し耳につける。別に何かを聴いてるわけではない。ただ、イヤホンをつけただけである。そして降りる駅がくるまで自分の足元を見つめる。今日も平和だ。大学をでてから一年半、会社員になり毎日、満員電車にゆられ仕事ヘ行く。日々を普通に過ごし、流れていく。俺は、これでいいのだろうか。 その時、見つめていた足元が歪み始めた。考える時間をあたえる間もなく景色が変わった。宇宙のように暗く輝いている。それを目にした俺はふと、 「綺麗だ。」こんな言葉、久しぶりに使った。最後に使ったのは、成人式でみた高校のときの同級生、名前は確か… 「和田!?」 いや、違うそれは俺の名前だ。あいつの名前は確か、 「松本…?」ふと、振り返る。そこにいたのは高校のときの同級生だった松本だ。肩に少しついた茶髪の美少女だ。茶髪なのは確か水泳に全力を出していたからだったと思う。 「うわー!和田久しぶり!全然変わってないねー」いつも明るく接してくれた彼女のことを好きだと思ったこともあったが、水泳の邪魔になってしまうのが嫌で気持ちを伝えなかった。 「ここは何処なんだ?松本?」 「エエッそれ私に振る!?わかんないよ私もー!」 その時だった。 ピンポンパンポンパーン。 光の中から出てきたのは一人の女性だった。 「よいしょ〜大変だわ〜会議の書類が〜〜」 真っ暗な世界の中の一つの光の中から出てきたその女性は、オレンジがかった黄色の髪に糸目の…なんか、そう、あれだ。異世界転生ものに出てくる神様、女神様みたいだ。 ぽかんとしている俺と松本に女性は言った。
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