悪役令嬢の最後の一手

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 卒業パーティーのシャンデリア落下事故。  よくまあ事件にならなかったものだ。あれ、事件なら王子暗殺未遂事件になる。  そして事件にするべく疑われていたのは、魔法属性的に実行可能な悪役令嬢と過剰な癒しで証拠隠滅したかのように見えるヒロイン。  ヒロインはヒロインで結構やらかしていた。この女のせいで不利益を被った家が共謀し、他国についたら国家滅亡の危機だったらしい。  そりゃ、ヒロインのせいで不利益を被った相手の名誉回復に努めて(婚約者を用意して)、国内安定を図るわ。  高位貴族子息の婚約者なんだから、相手も同レベル。で、息子がやらかしたのにその相手を王子が持っていたら、彼らの家も不名誉だとかで、聖女という高名が必要になったそうだ。  逆ハーの園である離宮は隔離で、幽閉に近い。犯人候補として一生監視の意味合いもあるらしい。  こういう時、まきぞえざまぁ。って、いえばいいのかしら。  もう1人の犯人候補である悪役令嬢は、結婚して伯爵夫人となった。  元悪役令嬢を監視するのは夫である伯爵。    この男、一見まともに監視していそうで、やる気がない。 「年下の女性のわがままを受け入れる度量はありますよ」  なんてさわやかに笑う男の本音は、やらかしてくれた方が面白いだ。  ただこの男、ときどき「血で染めたい」なんてヤバイ性癖が顔を覗かせる。  離婚したい。  傷跡を残さないように治療すると言われても嫌だ。夫が監視役なんて仕事を含んでなければ家出してやるのに、逃げたら王家から暗殺されるらしい。  断罪パーティーを潰す為には仕方なかったとはいえ、王子暗殺未遂はダメね。 「血塗れの君は美しい」  ガチなトーンで夫にささやかれ、悪役令嬢だったかつての日を反省する。  願わくば、逆ハーの園の面々も同程度には不幸であってくれ。  一緒にやらかした世代だとまとめられる同志だ。1人だけ変な結婚したと思いたくないの。  裏切らないでちょうだいね。
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