悪役令嬢の最後の一手

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 ヒロインってやっぱり幸運値高いのかしら。  取り巻きの攻略対象全員、落ちてきたシャンデリアの下敷きなのに無傷って。  ヒロインが密着していた王子はぶっ倒れて血を流しているのに、おかしいでしょ。  そして悪役令嬢は負け犬なのよね。幸運値でもヒロインに劣るか。  人の背丈の数倍はある巨大なシャンデリアはヒロイン一行に向かって倒れた。それなのに飛び散った破片が顔面直撃。  額が切れているようでズキズキ痛むし、流れ落ちてくる血のせいで左目が開けられない。  この世界は魔法がある。  それこそが、貴族ばかりの学校にヒロインを導いた。  悪役令嬢が使う魔法属性は闇。派生で腐蝕やら影属性も使える。  ヒロインが使う魔法属性は光。病気や怪我を癒すことにどの属性よりも高い効果を発揮する。 「殿下をお救いするのよ」  リディエスタは叫んでからシャンデリアを闇魔術で切り分け、吹っ飛ばす。これで闇魔術の痕跡があってもおかしくない。  あと痕跡が残るのは切り離した先の天井を残すのみ。  流れる血もそのままにリディエスタはユミアにつかみかかる。 「何をしているの! この学校にいるのは何のため! 今力を使わなくていつ使うの!」  呆然としていたユミアがリディエスタを見る。 「今ここで殿下を癒す力があなたにはあるでしょ」  視線を落とした先にユミアは愛しい相手を見つける。血に濡れた姿に言葉にならない悲鳴をあげ、側に座り込む。  ドレスを血で汚しながら、魔術を発動させる。その力はマンティアーノ王子だけでなく、広範囲に及ぶ。  リディエスタの額からも痛みが消えた。  ユミアが感情のままに発動させた魔術は半球状に広がり、大広間を包み込む。  それはこの場にいるすべての者を守っているようで、癒す様は神々しくすらあった。
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