悪役令嬢の最後の一手

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 乙女ゲームの悪役令嬢って、過酷な立場よね。  婚約者を奪われ失恋し、婚約破棄後は貴族として死亡か、心身も死亡か幽閉。  ヒロインの方は攻略に失敗したところで死亡エンドにはならないのに、ホント、ヒドイわ。  そして、前世の記憶よ。  もっと早く思い出させて。  幼少期とまでは贅沢いわないから、せめて昨日。もしくは今朝。  ホント、断罪パーティー会場に入る前に、思い出したかったわ。  そしたら、絶対逃走してたのに。  キラキラと光り輝くシャンデリア。その下で卒業を喜び、美しく着飾った同級生たち。  その中でひときわ目立つ逆ハーを決めたヒロイン一行。 ピンクゴールドの髪にピンクの瞳。白とピンクを基調にしたドレスで周囲魅了する笑みをふりまく。  ドレスも装飾品ももはや平民の物じゃない。王子サマを筆頭に高位の貴族令息に隠しキャラの学校の先生までコンプリートしてれば、中級貴族令嬢を上回る装いにもなるか。  あちらはこの世の春。こちらは地獄に落ちる一歩手前。  まったく嫌になるわ。  学校のある日はほぼ毎日の様に嫌がらせしたし、偶然2人きりになった時は階段から突き落としもしたわよ。  実はいい人でしたなんてかばってくれる人がいないくらい、感情のおもむくままにやらかしたわ。  そのくらいの誤ち、子どもにはよくある事でしょ。悪役だからって罰が酷すぎるのよ。  前世の記憶にある政治家のように「記憶にございません」と言ったら、どうにかなるかしら。  どうにもならないわよね。  真っ黒がグレーになるだけで十分なんだけど。  漏れそうになるため息を我慢してリディエスタは周囲に視線を向ける。  銀色髪はいつもと同じ縦巻きロール。今日の為に新調した、真紅と黒を基調としたドレス。会場に1人で立つ彼女に向けられる視線は優しくない。  それでもうつむくことなく、彼女はまっすぐに立つ。  会場となっている大広間の中心付近で、断罪されるのはこのあたりだろうかと、鋭い視線を向けてくる婚約者の王子を闇色の瞳で見た。
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