ショートストーリーズ「嘘」

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電車の中、ガタンゴトンという音と人々の笑い声、話し声、時折のアナウンスに包まれながら、私はぽつんと座席に座り、ゆらゆらと揺れていた。  窓には雲一つないという言葉にふさわしい空。もう17時過ぎなのか、ダークブルーになっている。建物もぽつぽつと電気がついている。夜になりかけている私の心の電気は停電したままだ。  友達に「彼氏いるの?」と言われ、とっさに「いるよ!」と言ってしまった。本当は彼氏なんて生まれてから一度もいないくせに。  そこから、馴れ初めや彼氏の好きなところ、デートはどこに行ったかを聞かれ、私は自分でも驚くぐらいすらすらと口から出任せで答えてしまった。しかも、その勢いで「今度の日曜日、彼に会わせてよ!」と言われ、了承してしまったのだ。  なんで、こんなくだらない嘘をついたのだろう。もし、そのことを友達が知ったら、どんな顔するのだろう。  そう考えていると、頭が次第に真っ暗になってくる。  このままじゃいけないと思い、頬をぺちぺち叩いた後、スマホを開き、彼女にLINEした。  【もしもしごめん。嘘ついた。本当は彼氏なんかいない。】  このメッセージを送った後、すぐに既読がついた。  しかし、彼女は、普段は既読後すぐに返信がくるのだが、今回はなかなか来ない。  やっぱり、嘘ついて怒っているんだ…。  嘘なんて、つくんじゃなかった…。友達のLINEをみながらポロポロ泣いていた。  その時だ。  ピロン  友達からのメッセージがあった。  涙を拭きながら、彼女の返信を読む。  【うん、分かってた。よく考えていたら、馴れ初めは麻里の好きな漫画に似てたし、彼氏の好きなところも好きな俳優の好きなところと同じだったしね!あと 、今日、4/1だったじゃん。明日、「嘘だよね!」と言うつもりだったから、手間が省けたー!】  ははははは…。知ってたんだ。そういえば、今日、エイプリルフールだったなぁ。よかったなー。  私の心の中は少し、明るくなり、頬はピンク色になった。  窓の外に映る電気が次第に多くなっていった。
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