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ミカルの狙い
臙脂色のソファへ俺が腰かけると、ミカルは当然のように隣へ座ってくる。
やけに距離が近い。俺を聖石で封じているからと侮っているのか? 甘く見られたものだ。
その気になれば勢いよく首を伸ばし、その首筋に噛みついて血を搾り取ることなど容易いこと。だが少しでも情報を集めたくて、俺は口を閉ざして話を待つ。
目を細めながら俺をまじまじと見た後、ミカルはようやく話し始めた。
「半ば強引な真似をして申し訳ありません。こうでもしなければ、落ち着いてカナイと二人きりで話すことなど叶いませんでしたから」
「俺と話だと? ずっといがみ合ってきた人間と魔の者が、何を話すと言うのだ?」
敵意を抑えぬ俺に対し、ミカルが小さく頷く。
「そう……私が生まれる遥か昔から、人と魔の戦いは続いてきました。元は魔の者も人だというのに――」
悲しげに伏せられたミカルの目に、俺は眉間にシワを寄せてしまう。
魔の者へ成り果てた俺への同情か? 不快でしかないな。
睨みつける俺の目と再び視線を合わせた時、ミカルは熱く真っすぐな眼差しで俺を射貫いてきた。
「吸血鬼の王である貴方の力をお借りしたい。どうか魔と人の戦いに終止符を打つため、私に協力して頂けませんか?」
「協、力?」
「私は個人的に、魔の者を人に戻す研究をしています。望む者には人としての生を……すべてがそれを望んでいないことは分かっています。それでも滅する以外の選択肢を作りたいのです」
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