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借り物での偵察
◇ ◇ ◇
バラの香を宿した血をもらった後、俺は「体の調子が悪くなった。寝させてもらうぞ」とミカルを部屋から出し――まだ話したそうだったが――眠りについてしまった。
ミカルの血を口にして、思いのほか体が脱力して辛さを覚えたこともある。
しかしそれは、本来なら夜活動する俺が眠りにつくための口実だった。
朝日が昇り切った頃に俺は目覚め、寝すぎて気だるさを覚える体を起こす。
ありがたいことに、窓を遮るカーテンの生地は分厚く、ささやかに外が明るくなったことが分かる程度。
俺たち魔の者が日に当たって生きられぬ体ゆえに、昼間はほぼ活動しないと人は考えている。実際に該当する魔の者はいる。
しかし俺やヒューゴなど、ある程度の力を持つ者ならば、直接日の光を浴びなければ昼間でも活動できる。夜のほうが力はみなぎるが、戦うことがなければ昼に起きていても問題ない。
人が昼間に睡眠を多く貪れば、夜に目が冴えて活動的になる。それは魔の者になっても同じこと。
昼間に俺は動かないと考えているだろうミカルの隙を突き、ここから脱出するための材料を探す。そのための行動だった。
両手は封じられたままだが足は自由なまま。
俺はベッドから体を起こし、まずは出入り口の扉へと向かってみる。
開くことを期待せずに扉を肩で押してみれば――パチッ、と小さな稲妻が走り抜けたような痛みと痺れが走る。案の定、俺が部屋から出ないようにと結界が張られていた。
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