私邸の様子

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私邸の様子

 まずは蝶を高く飛ばせて屋敷の全体像を見てみる。  小高い丘の上に建てられた、白壁が美しい屋敷。ぐるりと手入れの行き届いた庭に囲まれており、さらにその周りはまばらに木が生え、坂が終わる辺りから民家がちらほらと見えた。  全体的に手入れはされているようだが、景観を守っているだろう庭師が見当たらない。  建物の裏側にある庭では、薬に使うだろう草花が育てられている。  あまり植物のことは詳しくない。草に関してはどれも同じようにしか見えない。  花が咲いているものもあるが、小さく密やかに咲くものや、色合いが薄い黄緑で草と同化しかけているようなものが多く、観賞用としては地味だ。  そんな中、裏庭の壁伝いに植えられた色とりどりの薔薇は見事だ。  大輪を咲かせ、見ているだけでその芳香が漂ってきそうだ――ミカルの血の味が口の中へよみがえり、思わず俺は顔をしかめる。  薔薇は駄目だ。魔の者にはやはり毒だ。想像しただけで脱力感を覚えてしまう。  眉間に力が入り、閉じたまぶたがヒクヒクと引きつる。これは視界に入れないほうがいい。  私は蝶を裏庭から移動させ、わずかに開いていた窓から私邸内へと侵入させる。  二階建ての大きな屋敷。使用人が数名いてもおかしくないはずだが、中も人の気配がない。その割には掃除されている。
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