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まるで待ち望んでいた遠方からの来賓でも迎えるような笑顔で、ミカルが俺に話しかけてくる。
つい昨日まで死闘を繰り広げていた相手に向ける顔じゃない。
……ようやく憎き宿敵を捕らえられたと歓喜しているのか、思わずそんな顔をしてしまうほど。
捕らえてさっさと殺さないところを見ると、どうやらジワジワといたぶり殺す気でいるのだろう。
好きなようにすればいい。この男に掴まった時点で、無事でいられるとは思っていない。
俺はフッと鼻で笑いながらミカルと目を合わせる。
「そうだな、ここ最近ずっと追われ続けてまともに休めていなかったからな。こんな寝心地のいいベッドで眠ることができて最高だ」
「気に入ってくれましたか。貴方のためにと思い、前々から職人に作らせたベッドですから――おや、どうかしましたか?」
さらりと気になることを言われ、俺の頬が引きつった。
「……俺のためにベッドを作らせていた?」
「ええ! ずっと貴方を我が屋敷へ迎え入れたかったのですよ。ようやく念願が叶いました」
高度な嫌みかと一瞬思う。だが瞳も表情も輝かせ、うっすらと頬を紅潮させながら答える様子から、心から喜んでいることが伝わってくる。
あからさまに歓迎されている。
人間をやめて二百年。ここまで理解しがたい者に直面したのは初めてだ。
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