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得体の知れなさに心底警戒と困惑する俺をよそに、ミカルはベッドへ近づき、縁へ腰かけて俺の足首へと手を伸ばす。
「このような処置をして申し訳ありません。今、動けるようにしますから」
そう言いながらミカルは俺の足を封じていた聖石を外してくれる。
じゃらり、と解放された瞬間、足が浮き上がりそうなほどの軽さを覚えた。
「どうかあちらのテーブルで話をさせて頂けませんか? お願いします」
足に自由は与えたが、手は封じたまま。反撃の隙を与える気はないらしい。
丁寧な物腰ではあれど、対等な扱いはしていない。あくまで俺は囚われの身。
そのことに少し安堵感を覚えつつ「分かった」と頷く。するとミカルはおもむろに俺の背へ手を差し入れ、体を起こすのを手伝ってくれた。
優しさすら感じる手つきに、思わず俺の背がぞわりと震えた。
「気安く触るな。一人で起きられる」
「しかし、その状態では両手を使えませんから、起き上がりにくいかと――」
「手が使えずとも体は起こせる。俺を二百歳の老人とでも思っているのか?」
俺が不快感を露にすると、ミカルは「失礼しました」と苦笑を浮かべる。
心なしか残念そうな気配に俺の心が煽られる。苛立ちで狂ってしまいそうな理性を落ち着かせながら、俺は体を起こし、部屋の窓際にあるテーブルとソファの元へ向かった。
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