ゆめの中

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「ただいまアオ。いい子にしていたか?」 ガチャッと鍵を開けて中に入るも返事がない。 寝ているのか?と部屋の電気をつけると、すぐそこの壁にもたれ、ぼーっと窓の方を眺めている彼の姿があった。 「アオ?」 明らかに様子がおかしい 目を見開いたまま硬直したように動かないアオ。 「おい…、おい!!」 「………」 どんなに強く揺さぶっても電池の切れたおもちゃのように反応はなく、目は虚だ。 「クソッ、一体…なにがっ!?」 ぐっと後頭部を支え、彼の肩に縋るように顔を埋める。 「しっかりしろ!!…っ、(”れい”)!!!」 どうすればいい? こんな事は初めてだ。 ドクドクと焦燥感から心臓が激しく動く。 「頼む…、俺を、見てくれ…っ…」 弱々しい声が口から漏れた時ー、 「…く、ふふっ…」 「…!?」 その微かな笑い声に顔を上げると、にんまりと愉快そうに己を眺めているアオの顔。 「れっ…、アオっ…お前!?」 「あははは、めっちゃ必死!あははは!」 普段余裕ぶっている大人があんな必死な様を見せたのだ。面白くてしょうがなかった。 「なっ…!?」 その腹を抱えて笑う姿を呆然と男は見ていた。 「はぁー、笑った笑った」 「……」 「な、なんですか?馬鹿にされて怒ったんですか…?」 帰りが18時と聞いて待っていたのに、今はもう19時を回ろうとしていた。 「約束を破ったのは、龍さんのほうですよ?」 「悪かった…」 「えっ!?」 すんなりと謝る男に拍子抜けするも、なんだかいつもと違う雰囲気に「やり過ぎただろうか?」とつい心配になってしまう。 表情も暗く、また手は微かに震えているようにも感じる。 「もう、仕方がないですね…」 調子が狂うなぁと、そっと頭の上に手を置き、優しく撫で始めた。 「大丈夫ですよ〜。この部屋に貴方ほど怖いモノなんかないですからねぇ」 「アオ…」 まるで大きな子供みたいだ。 そんなに慌てさせてしまったのか… 「すみません…少し、からかい過ぎ、わっ!?」 ドサっとカーペットの敷かれた床に押し倒される。 「え、あ…あの?」 「……いいぜ?そんなに笑いたいなら、存分に笑わせてやるよ」 「ちょ、ひゃ…!?」 覚悟しろよ?と不敵な笑みを浮かべ、男はアオの脇下に手を伸ばした。 * * * * 「ふぇ、も…、らめぇ…」 擽られまくり、アオは床の上でぐったりとしていた。 「どうだ?参ったか?」 (ち、畜生!こんなはずじゃなかったのに…!) はぁはぁと浅い息を繰り返しながら涙を浮かべ呂律も回らなくなっている様子を見て、ようやく男は満足したかと思いきや今度は体を抱き抱え、ベッドの上に下ろした。 「…、りゅ、龍さん…?」 「これに懲りたら二度と、あんな可愛くねぇ悪戯はすんじゃねぇぞ?」 「は…はい…」 素直に返事をすれば、ゆっくりと男はアオに覆い被さってきた。
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