ぜろ

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そんな風に過ごしてどれだけ経っただろう。 住居人の男が初めて友人を招いた。 「なぁ…どうだと思う?」 「うーん、別に何も感じねぇけど…」 最初は何の話をしているのか分からなかった。 深刻そうな面持ちの男と訝しげな友人。 なんだろ?と近づいて堂々と話を聞く。 「だってさ、…この部屋にいるとたまに呻き声みたいなのが聞こえるしさ…この前もラップ音つーの?がしたんだって」 !?!? 触れない見えない聞こえない。そう思っていたのに ドキッと、動いていないはずの心臓が跳ねた。 確かに男の隣に座ってよく話しかけてた。 知らずに迷惑をかけたと本当に申し訳なく思ってるが… 慌てて弁解するも、零の声は届かない。 「はじめての一人暮らしだからって気にしすぎ。んなのアパートなんだから他の部屋の生活音だろ」 「そ、そうだよな!」 ………。 怖がらせていたなら俺が悪い。 だから、男の隣で話しかけるのはもうやめようと心に誓った… 「こんにちはー!!シロネコ引っ越しセンターです!」 後日、男は退去した。 最初は我慢した。けれどどうしても寂しさから俺は話しかけるのをやめられなかったし、気がつけばそばに寄ってしまった。 なにより男は知ってしまったんだ。 この部屋が、いわゆる事故物件。ってことに… 引っ越し後のクリーニング業者も、まさか幽霊が目の前にいるとは知らず、呑気にそう話していた。
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