ゆめの中

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「大前さん。最近引っ越したんですよね?」 「あぁ、そうだが?」 帰り際、事務所を出る前に1人の部下にそう尋ねられた。 「ちゃんと防犯システムがしっかりしたところに住んでますか?今日の客、最後すげぇ顔してましたから」 「はは、いつものことだろ。クソでも真面目な客ばっかだと俺らも楽なんだがなぁ…」 闇金業者。 客はどうしても金がないから貸してくれと乞う。どうして当日にそんな大金が必要なのか…。よっぽどでない限り真っ当に働けば貯められる額だろうに、それもせずに楽に稼ぐことばかり考えて酒、女、ギャンブル、借金返済に溺れる。 そんな奴らに甘い顔をするはずもなく、今日もロクでもない客の世話焼きという名の取り立てに追われた。 「んで、新居はいいところにしたんですか?」 「まぁ不自由はしてないな。あと引っ越しつーより、借り暮らしみたいなもんだ」 家に1人残してきた彼のことを思い出し、男は…大前敦己(おおまえ あつき)はクスッと小さく笑った。 とある事情からアオには”龍”と名乗り呼ばせているが…。 (今頃、退屈だと拗ねてなければいいが…) 退屈しのぎに最近流行りのゲームでも買ってやるべきだろうか? 「ま、まさか恋人ですか!?」 「遅かれ早かれ、そうなればいいなぁと思っている」 「大前さんが落とせない相手とか想像できません…」 一体どんな美人ですか? と問われたので、やんちゃで手のかかる仔犬みたいなやつだよ。と答えた。
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