13.果樹園の魔女さん

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 ここだけ、イギリスのアフタヌーンティの農園に紛れ込んだかのような錯覚を起こすほど。ゆったりと甘酸っぱい匂いに包まれ、小鳥はここも大好きだった。  ここに遊びに来ると、漁村のおじいちゃんのところに負けないおいしいお茶と、ここでしか食べられない極上のスイーツをご馳走してくれる。いつだって。  そして今日も。農作業着の背が高い美男が、てきぱきとお茶を淹れる姿。  この畑とキッチンは俺が育ったすべて。彼はいつもそう言う。小鳥が漁村のおじいちゃんが大好きなら、大洋は二宮のひいおばあちゃんとおばあちゃんが大好き。そういう育ちや気持ちがそっくりで、本当に小さい頃から気が合っていた兄貴。 「大洋兄のお茶、ひさしぶり」 「柚子ティーに、ハチミツレモン。どれにする」 「ううん。シンプルにそのままがいいな」  カップに熱いお茶が注がれ、少し甘い芳しさがキッチンに広がる。 「いらっしゃい。小鳥ちゃん」  お茶ができたところで、農作業姿の『珠里おばさん』が帰ってきた。 「お邪魔しています。珠里おばさん」 「おひさしぶりね。ゆっくりしていってね」  ほっかむりの農帽を取り払うと、ショートカットの綺麗な黒髪が艶やかに現れる。そして小鳥にやんわりと微笑む。幼馴染みの母親。  島の幼馴染みのお母さんを見て、小鳥はいつも思う。『珠里おばさん、ほんとうに何歳なの?』と。  琴子母と同い年だと聞かされていても、年齢を知っているからこそ会うたびに思ってしまう。
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