2.お兄ちゃんが待ってる

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 個室の端っこ。ふすまの前。そこが小鳥のいつもの定位置だった。主役としてど真ん中に座っていたのは、だいだい三十分くらいだろうか。 「わりい、小鳥。南美がサラダまだ食いたいってよ」 「オーライ。他に追加はないかな」  次々と挙手があり、小鳥が要望を聞き、まとめてオーダーをする。 「はーい。ビールきたよー。このカクテル頼んだのは誰ー」  入り口でこうして食事会をまとめることに慣れてしまい、そして誰もがそこに小鳥がいることを当たり前に思っていた。 「もう。小鳥ちゃん。相変わらず。今日は主役なんだよ。私が替わるから!」  艶々の栗髪、毛先は女の子らしいカールにして、まつげもぱっちりキラキラの瞳。すっかりオトナ女子になった花梨が小鳥の隣にやってきた。  元々美人で目立っていた花梨は、大学生になるとますます男子の目に付く美人女子大生に。さらに、竜太と別れてから『男に遠慮して自分を騙していたのがいけなかった』ことを悔いたとかで、それからハキハキと物を言う女子に変身。いつもは男子が花梨花梨と周りを固めるほどモテるのだが、キッパリ嫌なことは嫌、いけないことはいけないときちんと言うので、男子も強気に突っ込んでくることがなくなった。その潔い性格がまた信頼されているようだが、逆に『姉御肌の小鳥と強気美人の花梨には敵わない』と男子に言われるようになってしまった。  サークルを管理している上で、花梨は小鳥にとってパートナー。高校時代以上になくてはならない存在になっている。 「いいよ、花梨ちゃん。それより酔って、うちの女の子に悪さしないか見ておいて。さりげなく助けてあげて」
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