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沢山のリキュールとお酒がいっぱいに並べられている棚と、様々な形のグラスが収められている大きな大きな食器棚。その気になれば、自宅を利用した隠れ家バーでも開店できそうだった。
「パスタがいいかな。リゾットもできるよ」
「んー。やっぱ、パスタかな」
「鰯のペペロンチーノでいいかな」
「うん!」
「冷蔵庫にね、惣菜があるから好きなものを選びなさい」
ゆったりとした動作でフライパンを火にかけるマスター。もう高齢でも動作がゆっくりでも、それでもきちんとお店で出していた味が出せる手際が身に付いている。
エプロン姿で料理をするおじいちゃんの手元から、香ばしいガーリックとオリーブオイルの匂いがたちこめる。小鳥は冷蔵庫を開けて、一人でわくわくしている。おじいちゃんのお惣菜も、どこかのデリカテッセン並。季節野菜のサラダに、魚介のマリネ。フルーツやナッツにチーズをつかった和え物などいろいろ。きっとバーテンダー時代に覚えていたものなんだろうと思う。
いろいろな惣菜をすこしずつ小皿にとって選んでいる内に、もうペペロンチーノが出来上がっていた。
「さあ。一緒に食べよう」
リビングのケヤキのテーブルで、おじいちゃんと一緒に『いただきます』と食事をする。
「おいしー。ほんと、おじいちゃんのご飯、大好きー」
なんでも元気よく頬張る小鳥を見て、おじいちゃんもにこにこにこにこ嬉しそうに笑ってくれる。
最後はフルーツが必ず出てくる。はずだった。だがこの日、おじいちゃんが『ちょっと待っていて』とリビングからふっと出て行ってしまう。出て行ったのはキッチンではなく、自室がある廊下だった。
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