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おじいちゃんがリビングに戻ってくると、その手には真っ赤な箱。それを小鳥の前に静かに差し出してくれる。
「二十歳になったんだよね。おめでとう、小鳥。大きくなったね」
心なしか、おじいちゃんのつぶらな瞳が潤んでいるように見えてしまった。そうしたら、小鳥も目頭が熱くなってしまう。
「ありがとう。おじいちゃん」
「僕ね。結婚しなかったから、子供のことは諦めていたんだけれど。英児君と琴子さんのおかげで、小鳥が生まれた時から今日まで本当の『お祖父ちゃん』の気分をさせてもらえて、嬉しかったよ」
「おじいちゃん……。私だって同じだよ。滝田のお祖父ちゃんはもう年取っていたから小学生の時にいなくなっちゃったし、大内のお祖父ちゃんは生まれた時にはもういなかったし。ずっとずっと一緒にいてくれたのは伊賀上のお祖父ちゃんだよ。お母さんだって、お父さんに似ているって、マスターのことお父さんみたいってよく言っている」
「僕も、滝田の三姉弟は本当の孫だと思っているよ。小鳥が生まれた時から、ほんとうに楽しかった」
これまでの沢山の想い出が溢れだして、お祖父ちゃんより先に小鳥が泣いてしまう。そんな小鳥を見て、おじいちゃんが優しく笑う。
「蜂蜜付けにした苺の紅茶が大好きだったね。小さな時は、僕が作るイチゴミルクが飲みたい飲みたいと大泣きして、琴子さんを困らせていた」
「おじいちゃんがつくるものは、みんな大好きだよ。だから、私……」
それを継ぎたいの。守りたいの。ずっと私のそばに置いておきたいの。
そっと囁いた。おこがましくて、胸を張って言えないのが情けないと思いながら。
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