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恋を知らなければ、そんな言葉は出てこない。そうは言わなかったけれど、おじいちゃんの目が優しくそう小鳥に言っているようだった。
「おいしい。気に入ったよ、おじいちゃん。おじいちゃんの苺シリーズはどれも最高」
もの心つく前は、イチゴミルク。小さな女の子だった時は、蜂蜜漬け苺の紅茶。大人になった女の子には、フローズンベリーのカクテル。情熱的な赤色。元気になりたくなる苺色。小鳥はそっと目をつむって、おじいちゃんがいつもプレゼントしてくれた苺を味わう。
こうして私はこのおじいさんに大事にしてもらってきた。そして私はこの味をいつか……。
「ところで、小鳥。今夜は、エンゼルじゃなかったね。お母さんはいま、何に乗っているのかな。明日、ゼットがないと困るんじゃないかな」
ああ。ここでもまた。説明しなくちゃ――。
小鳥は頭を抱えながら、伊賀上マスターにも、エンゼルに乗っていない理由を説明した。
おじいちゃんもとても驚いて心配そうな顔になったが、その後は、カウンターで顔をつきあわせて、フルーツを食べたり、二宮からもらってきたレモンパイを食べたりして、夜遅くまで沢山の話をした。
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