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15.龍星轟、狙われる?
この家に泊まるのは初めてではない。夏休みに、弟たちと泊まったり、おじいちゃんが体調を崩した時は琴子母と泊まり込んだこともある。
その為、滝田の誰かがいつでも泊まれるよう、伊賀上邸には二階にゲストルームを用意してくれている。
おじいちゃんの部屋のように、ギンガムチェックのベッドカバー。そしてちょっとの本とDVDとテレビを置いてくれている。海の波の音が聞こえ、小さなシャワールームまである。おじいちゃんは女性が喜ぶ小物を見つけるのも用意するのも上手。シャワールームにはいつも、まんまるお月様のようなコイン型のゲストソープを置いてくれている。フランス製のジャスミンの香りがする小さな石鹸。そしてナイトテーブルにはラベンダーの花束もリボンで結んで小さなフラワーベースに挿してくれている。
まるでペンションに泊まりに来たような素敵な気分になれる白い部屋。琴子母もこの部屋がお気に入りだった。弟たちでさえ。この部屋の香りが、おじいちゃんの海の家の匂いだって……。
小鳥はベッドに横になりながら耳を澄ます。
真下はおじいちゃんの部屋。そこから微かに聞こえてくる音楽。
今夜はミッシェル=ポルナレフの『Love Me, Please Love Me』。
おじいちゃんもきっと、忘れられない恋をしたんだろうな。
出窓の向こうに見える入り江。向こう岸に見える工業地帯の光、そのすぐ隣が空港。そして、龍星轟がある街。遠く揺らめく光を見つめながら、小鳥はメッセージを打つ。
翔兄ちゃん。初めてお酒を飲んだよ。
おじいちゃんのカクテル。『リトルバード』っていう私の名前のカクテルだよ。大好きな苺の味。おいしかった。
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