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だけれど。返事が来なかった。それでも待っているうちに、大好きな部屋に溶け込むように微睡んでいた。
✿・✿・✿
目が覚めると、またフレンチ・ポップスが聞こえる。
今朝はシルビィ・バルタンの『愛はジタンの香り』?
真田会長はこの漁村のことをキーウェストみたいに思わせてくれるというけれど、おじいちゃんの家にいると南フランスの地中海の漁村にいるような気分になる。
優しいジャスミンの石鹸で顔を洗って、身なりを整え、小鳥は一階へと向かう。階段の窓にもおじいちゃんは緑を飾っていて、そこに燦々と朝日が降りそそいでいる。
キッチンにはいると、早起きのおじいちゃんがエプロン姿でもう食事を作ってくれていた。
「おはよう。小鳥。初めてのお酒は大丈夫だったかな」
「うん。大丈夫だったみたい」
記念だったから、あの一杯を大切に飲んで終わりにしただけだったが、お酒との相性は悪くはないようで小鳥もホッとする。
「学校があるんだろう。ここから龍星轟に帰って、そこから北条方面だろう。遠いな。足止めして悪かったね」
「走るの大好きな私にそれ言っても無駄だよ。私たちなんて、こっちからあっちなんてすぐ飛ばしちゃうんだから」
「そうだけれど。心配だな。その三菱の車がなにを思っているか怖いね。二度と小鳥と遭って欲しくないよ、おじいちゃんは……」
ここでも心配をされてしまい、小鳥も大人しく口をつぐんだ。
「英児君がいるから大丈夫だね。ああ、でも。英児君も、カッとなると止まらなくなっちゃう時があるからねえ。まあそれも若い時の話かな」
「父ちゃんって。若い時、短気だったの? どんなヤンキーだったの」
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