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「ヤンキーと言っても、いろいろな子がいてね。ソフトな方だったけど……。僕が初めて彼を見た時は、剃り込みを赤くメッシュに染めたリーゼントだったかなあ……」
「わー。考えたくないけど、やっぱり見てみたい」
でも『ヤンキー時代の写真を見せて』と弟たちと何度かせがんだが、父は頑として見せてくれない。琴子母だけが見たことがあるらしく、その写真は琴子母に隠すようきつく言い渡しているようだった。
「喧嘩っ早いといえば、そうだったかな。でも英児君が怒るのは根性曲がっているヤツ許さねえなんてところかな。あと仲間が傷つけられた時は、後先考えずにほんとうロケットのようにすっ飛んでいくんで、武智君や篠原君がストッパーだったねえ。うーん、こうやって思い出すと、やっぱり小鳥は英児君に似たんだね」
「もう、それヤダ。聞き飽きた!」
元ヤン親父の若い時そっくりと言われると、自分も元ヤンみたいな気分になりそうで、似ていると言われると小鳥はついムキになってしまう。
そんな小鳥を見て、おじいちゃんも楽しそうに笑い出す。
「だから。無茶はするんじゃないよ。彼も……哀しむよ」
ドキッとした。おじいちゃんが初めて……『言わなくても誰か知っている彼』のことを口にした。
「今度、彼と一緒に来なさい。待っているよ」
いつもの、優しい優しい伊賀上おじちゃんの静かな微笑みを見せられる。
「……うん。わかった」
彼とどうなったなんて、まだ真向かって言えないけれど。でも小鳥は頷いて、大好きな彼をおじいちゃんに紹介する約束をする。
「さあ。食べよう。急いで着替えに帰らないとね」
「うん」
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