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綺麗なスクランブルエッグとか、かりかりのトースト。おじいちゃん特製の柚子マーマレードに苺ジャム。生ハムのサラダに、不知火オレンジのカットフルーツ。おじいちゃんの店にあった苺のカップに入れられたミルクティー。綺麗な綺麗なモーニングの食卓ができあがっていて、小鳥も目をキラキラさせる。
「いただきまーす」
「沢山食べるんだよ。小鳥はほんとうにフル稼働なんだから」
「大好きなおじいちゃんの朝ご飯が食べられるなんて、とってもいい気分」
ほんとうに、おじいちゃんのお店も、おうちも、お部屋も、ご飯も大好き。
だからなくしたくない。おじいちゃんが一人で創ってきた世界の中で、小鳥は育ってきた。龍星轟という自宅とは違う、もうひとつの『私の家』だと思っているほどに。
✿・✿・✿
漁村の伊賀上邸に行くと、ほんとうに元気になれる。
なにもかもが小鳥を包んでくれる、優しい空間。すっかりいい気分。天気も良くて、朝から煌めく瀬戸内を横に海岸線をゆったりと運転をして龍星轟まで向かう。
朝一番、龍星轟の店先へと小鳥は到着する。
いつも通り、朝一番に出勤してくるのは事務の武智専務。そして、整備のスケジュールを管理している桧垣 翔。銀色のゼットを事務所前に停車させ、小鳥はいつもの朝早い二人を見つけて微笑んでしまう。
だけれど。よく見ると二人だけではなかった。朝から龍星轟の男達が集まっている。矢野じいも、清家のおじさんも、兵藤のおじさんもいる。中堅整備士の藤田さんに、若い整備士のノブ君にマコちゃんも。
そして、親父さんが社長席でもの凄い顔で腕を組んで座っている。朝から尋常ではない様子に空気を小鳥は感じ取る。
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