15.龍星轟、狙われる?

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 しかもお兄ちゃんが『お嬢さんが邪魔なことをした』なんて言った! 彼には彼なりの深い考えが前々からあっての『俺がエンゼルに乗りたい』だったのに対し、やっぱり私ってただ突っ走るだけの子供っぽいオバカさんだと思われたのかと、小鳥はショックを隠せない。 「なんだ翔、言ってみろ」 「その前に。修理が終わったエンゼルの試運転を俺にさせもらえませんか」 「いや、その前に。社長の俺に思っていることを報告してくれないか」  社長の俺に言わなくてはいけないことを告げず、自分の望みだけ『その前にさせろ』という口の利き方に、父が多少むかいているのが小鳥にはわかった。  しかし、父との付き合いも長くなってきた翔もお構いなし。怒りの炎が点火されたら若僧の自分なんてあっというまに踏みつぶされる怪獣的上司だとわかっていても、翔も毅然と英児父に真向かっている。 「確証がないんです。ないことを社長に安易に告げて混乱させたくありません。まだ自分の中でも『予測』に過ぎず、いまここで言えば、龍星轟の兄さん達にも混乱を招きかねないので。もう少し時間をくださいませんか」  そう、このお兄さんは、いつもこうして淡々と落ち着いている。そして父も、彼が淡々と頭の中で確実になにかを組み立てている時の落ち着きが見えた時、それもまた俺にはない眼で見えたものとしてすんなり受け入れる。『たまに生意気に俺に意見するが、言っていることいちいち一理ある』が父の翔に対する口癖だった。そして父はそんな彼をとても気に入っている。
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