16.車のように愛して

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「どうした。いつもなら乗っている車の話をいっぱいしたがるのに。そうでなければ……。今日なら、伊賀上マスターの家であったこと、どんな話をおじいちゃんとしたのかすぐ俺に教えてくれそうなのに。初めてのアルコール体験が、大好きなおじいちゃんのカクテル、しかもオリジナルレシピの『リトルバード』。メッセージで先に知っていても、小鳥が嬉しそうに楽しそうに話してくれる時を、俺も楽しみにしていたんだけれどな」  いつもの小鳥なら、彼の隣で良く喋る。それをお兄ちゃんが静かに聞いてくれる。嫌そうな顔などしないで、優しく頷いて相づちを打って、時々大人の言葉を挟み込んでくれる。 「昨夜。メッセージもちゃんと見た。返信できなくてごめんな。マコがNSXをぶつけたという連絡を、俺に一番にくれたもんだから、桜三里(さくらさんり)に向かっているところだったんだ」 「わかっている。朝、マコちゃんの怪我と事故を知って、だからお兄ちゃんは返信できなかったんだって判ったから」 「それなら、なにを拗ねているんだ」  お兄ちゃんだって、いつもなにを考えているの。『俺の考えの邪魔』って……。  それを言うことすら子供っぽいのかと、小鳥は沈黙を保った。  MR2のエンジンがさらに高く鳴り響いた。 「俺みたいな男だと、女の子が考えていること……わかってあげられないのかもな。なんか、ずれていて、でも小鳥がそれを笑って何ともない顔で許してくれている気がする」  思ってもいない言葉が彼から出てきて、小鳥は唖然とした。 「ずれているって? お兄ちゃんのどこがずれているの?」  MR2の速度が少し落ち、エンジンの唸りも鎮まる。
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