16.車のように愛して

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「嬉しかったよ。すごく! でも……恥ずかしかったの……。龍星轟のみんなが、放っておかないと思って。父ちゃんにもなんて言えばいいかわからない。弟たちにだってからかわられる。べつにいいよ、からかわられても。でもそうすると翔兄だって、何か言われたり、父ちゃんにいままでとは違う目で見られるかもしれないでしょう」  信号もない暗い車道を走っていたMR2が急に曲がって、海辺の路肩に駐車した。  突然、車を停めた翔はエンジンを切ると、ハンドルにもたれ困ったように前髪をかき上げため息をついた。 「小鳥。カモメのキー、見せてくれないか」  小鳥はドッキリとした。どうしてそんなことを言い出すのかと。つまりそれって、プレゼントの行く先が今はどこなのか知っているってこと? 「じゃあ。俺から見せようか」  カモメのキーになにをしているかバレていたことに戸惑っている小鳥に致し方ない笑みを見せた翔が、自分のポケットからキーホルダーを取りだした。 「小鳥の真似をした」  金属のシャランとした音を鳴らす鍵がいくつかぶら下がっている。それらを見て、小鳥は息を呑む。そして自分も慌ててカモメのキーホルダーをバッグから取りだし、同じようにお兄ちゃんの手元に並べた。  ふたりのキーホルダーに、同じ部屋の鍵、そして銀色の『同じリング』が夜明かりにきらきら揺れている。 「え! これってお揃いだったの!?」 「そう。えっと……。これがいいと選んだら、ペアだったんだよ。ペアなのに片方だけだなんて、なんかヒビがはいるみたいで嫌だろ。だから俺の分も……」 「どうして、そう言ってくれなかったの!?」  口元を曲げ、翔が肩を落とす。
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