16.車のように愛して

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「小鳥が指につけてきたら、俺もつけて、びっくりさせようかなと……。だけれど、指じゃなくて、キーについていると知ったのは今朝なんだけどな。でも、肌身離さず、俺の部屋の鍵と一緒に持っていてくれていると判って、嬉しかった」 「ご、ごめん……。ほんとうは指につけたいよ」 「いいんだよ。小鳥が家族や龍星轟の兄さん達に知られても大丈夫という気持ちになるまでとっておいてくれたら」 「大丈夫だよ。でも……お兄ちゃんが……」  優しく微笑んでくれていたのに、その目元が凛々しい眼差しになり、真っ直ぐに小鳥をみつめてくれる。 「小鳥が俺のものになる。俺のそばにいて欲しい。そう願っていた時から、ずっと前にもう覚悟していたことだ。俺はもっと大丈夫」  ずっと前? 小鳥は彼を見上げ、目を丸くした。私を欲しいとか、俺のものにしたいと、だいぶ前から思っていたと言ってくれたから。 「だから俺。今夜は一緒に走ろうと、親父さんの前で平気で誘っただろう」 「うん、そうだった。あれ、私、びっくりしちゃったんだから」  あれが『俺はもっと大丈夫』という証明だったらしい。 「いや、やっぱり俺が馬鹿だった。これ貸してくれ」  小鳥の手からそっと、彼がカモメのキーホルダーを取り去る。そこから翔は銀色のリングを外してした。  そして小鳥の手を静かに取った。  彼の熱い指先が、小鳥の指を爪先まで優しく伸ばす。 「あの晩、俺からこうして指につけてあげればよかったのに……。俺も、カノジョに指輪を贈るのは初めてで照れくさかったんだ」
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