16.車のように愛して

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 でも、小鳥は彼の心の奥に潜む本当の気持ちを感じ取っていた。指輪を贈ったのは初めてじゃないよね……。瞳子さんに慌ててプロポーズをした時も指輪を贈ったよね。でも、受け取ってもらえなかった。彼女が他の男性との人生を選んだ日。ほんとうはお兄ちゃんにとって『指輪』はトラウマ。受け取ってもらえるかどうか、緊張していたのかもしれない。なのに、それでも小鳥の二十歳の記念にと指輪を選んできてくれた。それとも、指輪を贈りきれなかった男がそれを受け取ってもらって初めて『男になれる』という気持ちもあったのではないかと――。 「私は嬉しかったよ。MR2で海までぶっ飛ばしたいと思ったけれど、やんちゃな走りをしないで帰るってお兄ちゃんと約束したから、我慢して帰ったぐらい」 「海までぶっ飛ばしたいって……。小鳥らしいな」  やっと彼が声を立てて笑ってくれた。 「ごめんな。遅くなって。こうするべきだった。俺から小鳥に――」  彼が小鳥の指先を優しく伸ばす。そこへ銀のリングを近づけた。  その指が、左手の薬指――。その指を選んでくれた彼の気持ちを知って、小鳥はもう泣きたくなる。  すっとその指に銀色のリングがはめられた。  サイズもぴったり。どうやって小鳥のサイズを知ったのか。他の女の子より背丈がある小鳥は、なんでも少し大きめサイズなのに……。 「ああ、よかった。サイズも合っていた」 「どうやってわかったの?」 「店にあるサイズ見本のリングを触って、小鳥の指はこれだなって」 「すごーい! でも……それも嬉しい……」  お兄ちゃんの指先が、私の指先の感触を記憶してくれているってことだよね――。ちゃんと小鳥の身体のことを感じ取ってれている証拠。
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