2648人が本棚に入れています
本棚に追加
「龍星轟で恥ずかしいなら、外していても構わないからな」
小鳥は首を振る。
「ううん。もう外さない。せっかく、翔兄がはめてくれたんだもん。ずっとこのままがいい」
どうして良いかわからなかったのに。見られて何か言われたらどう対応すればいいか困惑していたのに。大好きな彼から指につけてもらったら、やっぱりもう外したくない。このまま堂々としていたい。彼の手から指につけてもらえただけで、こんなに強い気持ちになれるだなんて――。
「ありがとう、お兄ちゃん。大事にするね」
と、彼の顔を見上げようとしたら、もうすぐそこに翔の顔が近づいていた。
「お、お兄ちゃん……」
大きな手が助手席にいる小鳥の黒髪を撫でる。
「この前は小鳥からだった。今夜は俺から……」
男らしい薄い唇が小鳥の頬の傍で囁く。長い指が小鳥の唇を確かめるように撫でた。
小鳥はロケットのように彼にキスをする。でも……お兄ちゃんの彼は、ゆっくり、彼女の唇の形と柔らかさを指先で感じてから、キスをする。
今夜は優しいキス。でも小鳥は彼をうんと愛したくて、胸が急く。それでも優しく静かに唇を愛してくれる彼に揃え、そっと大人しく彼の唇を吸った。
熱く、濃密に、そしてゆっくりと舌先が絡み合う。
お兄ちゃんからのキスは大人……。気持ちが溢れるまま突撃しちゃう女の子のキスみたいに騒がしくない。あれはあれで、情熱的で良かったけれど。
とろとろの蜜をゆっくりとふたりで舐めあっている。翔兄の静かで熱いキスはそういうキス。
最初のコメントを投稿しよう!