16.車のように愛して

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 何かに似ていると思った。そう、あれと一緒。おじいちゃんがつくってくれた、初めてのカクテルと一緒。とろっとした冷たいお酒なのに、口に含むと身体が熱くなる……。甘い苺なのに、大人の苦みもある。  恋みたい。ほんとうに、似ている。どこにもないのに、苺の匂いが鼻先をかすめていく。  キスもすっかり慣れて、小鳥からも彼の黒髪を指にすかして撫でた。熱い吐息が止まらない。 「小鳥、」 「しょ、翔にぃ・・」  車の中なのに、彼の唇はあの日のベッドでそうだったように、小鳥のあちこちにキスを落とした。そしてその指先が小鳥が着ているチェックシャツのボタンを外し始める。  彼の部屋でもない、彼のベッドでもない。でも小鳥も戸惑わない。その指先をどこまでも許した。シャツを開くと、薄いタンクトップになる。またそれを翔が静かにめくりあげてしまう。  素肌に彼の大きな手、熱い手。小鳥の素肌を優しく這い、ランジェリーもそっとめくっていく。  海辺の薄い夜明かりに、小鳥の乳房が少しだけ顔を見せる。ぜんぶ晒さないところが、彼の優しさなのか。でも彼も男の望みを滾らせ、熱い指先は小鳥の赤い胸先を容赦なく抓んだ。  片胸だけ衣服をめくりあげられ、そこからふっくらとした乳房、そして彼の指先がそこを欲しそうにさすっている。  ピットでMR2を猫みたいに撫でていた彼の手を、小鳥は思い出していた。あの手、あの手ときっと一緒。私の身体も、彼は車を愛すように撫でてくれている。  大事な車とおなじように、彼は愛でてくれている。そう思うと、身体の奥からどうにも止められない熱いものがこみあげてきた。溢れでてこぼれそうな感触……。 「嫌なら……」 「嫌じゃない」
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