2.お兄ちゃんが待ってる

5/10

2648人が本棚に入れています
本棚に追加
/316ページ
 そんなに驚かなくても、花梨自身も既に知っていることだった。同じ高校のクラブでの後輩だった彼が国大に合格し、一年生のうちになんとかメンバーを集めて最近になって形になり立ち上げたものだった。  小鳥が高校生の時に立ち上げた『自動車愛好クラブ』。その部員のひとり、ひとつ後輩に小谷という男子生徒がいた。その彼に次期部長を任せ、小鳥は卒業。その後も連絡は取り合っていて、彼も大学生になってすぐに車に乗ってダム湖の峠まで小鳥に会いに来てくれた。 「良いクラブが出来たね。今度、彼等とも交流してみない?」  花梨が声高にいうと、ついにそばにいた国大生男子達が我慢できないとばかりに切り返してきた。 「でもよ。あいつら『オタク』じゃん。機械工学オタクみたいな、車のスペックを自慢に走るだけだろ。小鳥はともかく、他の女の子はそれでいいのかなあ?」  小鳥は黙ってしまう。小鳥が立ち上げたドライブサークルに来てくれた女の子達の大半が『提携している国大男子に会える』というのが目的だったから。いまさら『車云々に夢中な大人しい男子』は興味がないと言いたいのだろう。  小鳥が提携したこのアウトドアサークルの先輩達は、どちらかというとイケてる男子の集まり。ファッションも、車も、勉強も趣味も、及第点から平均以上という活発男子の集まりだった。しかし彼等にも悩みが……。 「オタクって。先輩達だってオタクみたいなものでしょう。もう何事も男しか踏み入れられないようなハードなところまで追及しちゃうから」  小鳥の言い分に、花梨の擁護も加わる。
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2648人が本棚に入れています
本棚に追加