16.車のように愛して

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 やっと唇と唇が離れ、彼の指も小鳥の中から去っていく。額と額、鼻先と鼻先を擦りあわせて、囁きあう。  はだけた胸元も彼が優しく直してくれる。最後にもう一度キスを――と、ふたりで唇を近づける……。  ギュウンとMR2の側をかすめるように走り去っていくエンジン音。悲しい性、激しいエンジン音を耳にすると、キスもどこへやら。二人揃ってそちらへと目線が奪われた。  だが翔と小鳥は共に顔色を変えた。走り去った車がひとつ向こうの海岸線のカーブを曲がっていくところ。赤いテールランプに、大きな白いウィング……。 「お兄ちゃん、あれランエボ……だよね」 「白のランエボだ。小鳥が見たヤツなのか」 「うん。ばかでかいウィングだったから覚えている!」  揃ってシートに身を沈める。急いでシートベルトを締めると、翔はすかさずエンジンをかけた。 「しっかり掴まっていろ!」 「わかった!」  タイヤを鳴らし、MR2も車道へと急発進する。
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