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17.ランエボ男の正体
「くそ。こっちの海岸線も流していたか」
MR2のエンジンが激しく唸る。暗い海岸線、ランエボが消えたカーブを曲がった時、翔が急ブレーキを踏んだ。
前につんのめりながら、小鳥も見た。白のランエボが方向転換をして、こちらに戻ってくる。向かってくる。
「お兄ちゃん、アイツ、エンゼルをまた狙っている」
「わかっている……」
そして翔もそこに停車させたまま、じっと向こうの動向を窺っている。
だけれどアイツはこちらに戻ってくる。
小鳥は運転席にいる翔を見上げる。先程まで彼もとろけたような甘い眼差しをしていたのに。いまはもう、いつも龍星轟で見せている涼やかな目でアイツを真っ直ぐ見据えている。
怒りも秘めているだろうに、それをそっと抑え込むようにしてじっとしている。獲物をしとめる本物の狩りは、こうして息を潜め、静かにするものだ。彼を見ているとそう思う。
「来るぞ……」
ランエボのエンジン音が近づいてきた。もうひとつ前の海岸カーブを曲がったら、アイツの姿が見えるはず。
そのカーブがぴかりと輝くと、白いランサーエボリューションがスピードを上げて反対車線を飛ばす姿が見えた。
翔が再びギアを握り、アクセルを踏んだ。
MR2に気がついて戻ってきたランサーエボリューション。わざわざ戻ってきたランエボに突っ込まれるだろうとわかっていても真っ正面向かっていく翔兄。
白い車と青い車がもう目の前――。
「お、お兄ちゃん――!」
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