17.ランエボ男の正体

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 エンジン音を高く夜空に響かせるMR2。その後ろからまた激しいエンジン音。白いランサーエボリューションが猛スピードで追ってくる。 「父ちゃんに報せるよ」 「ダム湖に誘う。街中で後ろを取られたら、追突される。信号機が少ない道を選ぶと伝えてくれ」 「うん!」  すぐにスマートフォンを取りだし、小鳥は助手席で英児父の携帯電話の番号を押す。  ――どうした。小鳥。 「父ちゃん。アイツ、勝岡に現れた。それに、またMR2に突っ込んでこようとしたよ! いま翔兄がダム湖に誘い込んでいる!」 『わかった。俺達も嫌な予感がしておまえ達の帰りを待っていたところだ。今から向かう。無茶するなよ』  小鳥が返事をする前に、父が電話を切ってしまった。 「父ちゃん達もダム湖に来るって」 「わかった」  とても落ち着いた冷めた声。もう先ほど、優しい眼差しで熱い息で小鳥を求めてくれたお兄ちゃんではない。  でも、小鳥はドキドキときめいていた。やっぱりお兄ちゃんの運転はすごかった。手放した車なのに、今でも変わらず自分の手足のように操って……。MR2と今でも以心伝心、一心同体。それほどに乗り込んだ愛した、この車は彼の恋人だったんだ。そう思う。  彼は車をそうして愛せる人。私も、そんなふうに愛されたいよ。通じあう恋人になりたいよ。
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