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その通りに、翔が少しスピードを落として走行すると、向こうが必ず追いついてくる。また後ろに白い車が見えた。
「来たよ」
「アイツも、今夜は絶対に逃がさないと思っているんだろう」
ほら。また――。まるで向こうのドライバーの気持ちを手に取るかのように言い切る。
不可解で釈然としない小鳥は、ますます険しい横顔で神経と尖らせている翔からなにかを知ろうと見つめてしまう。
その視線に、翔が気がつき、ちらりと横目で小鳥を見た。その目を信じて小鳥は問う。
「お兄ちゃん、アイツが誰か判ったとか……」
彼の目線がフロントに帰り、黙っていた。でも、しばらくすると大好きな八重歯の笑みを見せた。
「社長に『俺の考えがある』と言っただろう」
うん、言っていたね――と小鳥も頷く。そしてその考えを翔兄は確証がないからと誰にも言おうとしなかった。
「たぶん。あの白いランエボは、『走り好き』ではない。あのランエボに一時的に乗っている『にわかの走り屋』だ。そして、ほんとうに狙っているのは『この俺』だ」
唐突に出てきた言葉に、小鳥はとてつもなく驚き硬直する。絶対的上司である英児父が促しても言わなかったことを、先に小鳥に言ってくれた驚きも――。
いや、そんなことより!
「ど、どうして翔兄なの!? だって、あいつが最初にぶつかってきたのは、私のエンゼル……」
そこでハッとする。小鳥も気がついた。
「え、もしかして……。翔兄の車だと、思っていたとか……?」
翔が頷く。
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