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「じゃあ……。どうして、お兄ちゃんが乗りたがっていた車に狙いを定めているの?」
そこでは翔もため息をつく――。
「だから確証がないんだ。そこまでは『もしかしてそうではないか』と気がついたんだけれど、相手に心当たりもないし、恨まれる覚えもない」
「走りの勝負をした相手とか――」
「顔も知らない男とは絶対にやらない。向こうから煽って無茶な勝負をしかけてきたとか、自分の身を守るためなら致し方ないけれど、そこまでの相手に出会ったことがない。だいたいは気心知れた龍星轟オフ会の仲間だけだ」
「だよね。荒っぽい走りをすると父ちゃんに店を追い出されるもんね」
龍星轟なりのポリシーは、従業員にも浸透していて、顧客もそこを信頼して集まってくれている大事な信条だった。
「でも! まだそうと決まったわけじゃないよね。龍星轟狩りが目的なだけかもしれないし」
「どっちにしても、アイツは龍星轟と俺を目印に走り回っていたんだろう。目的はわからない」
翔がアクセルを強く踏んだ。振り返るとすぐ後ろにランエボが近づいてきた。
「どうして壊そうとするの。MR2も、ランエボだって大事な車じゃないの?」
キチガイと思えるほどの奇行から、そんな想いが膨れあがる。
その想いに翔が答える。
「アイツは、走り屋じゃない。一時的に、戦闘用の捨て車にランエボを選んだだけだ」
「捨て車? ひ、ひどい!」
やっぱり、ランエボは生け贄? ぐしゃぐしゃになってもかまわない、相手の車はもっとぐしゃぐしゃにしたい? もし本当に翔兄を狙ってやっているんだったら何の恨み?
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