18.アイ、あい……、愛?

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 今度はMR2がアウトコース、ランエボがインコース。だが先ほどのカーブで頭ひとつ分翔に抜かれたランエボも、今度はかなり本気。インカーブで抜かしていけばいいのに、遠心力で大きく回るMR2の不利を利用してまた幅寄せをしてくる。  早く走り抜けることではない。彼の目的はまさに『車体潰し』!  くっ! 歯を食いしばる翔から、力んだ声が漏れる。流石の翔もアウトカーブの不利を突かれ、思うままに峠斜面へと吸い寄せられ――。ぶ、ぶつかる! 小鳥も目をつむった。助手席側にいると本当に斜面は目の前。エンゼルがまたこすれて壊される!  その時、小鳥の耳に聞き覚えのある爆音が聞こえた。  ドウン!  火を噴くようなエンジン音。それが聞こえた途端に、反対車線を陣取っていたランサーエボリューションがスピードを上げ、MR2の目の前を駆け抜けていった。  横にぴったりつけて、体当たりを望んでいた男が逃げるように去っていく。同時にMR2、翔の運転席の横には真っ黒な影が寄り添っていた。  日産スカイライン、R32GTR――。黒い車が白いランサーエボリューションの後ろをぐいぐいと煽っている。 「父ちゃん!」 「社長!」  剛力のR32GTRに後部を煽られ、白のランエボが致し方なくMR2の正面へと滑り込んできた。  だが英児父はそのまま対向車線を使って、白いランエボの真横に並んだ。 「と、父ちゃんが。あんなこと……」  いつもは絶対にやらない走り方だった。卑怯なランエボがやった対向車線を塞ぐ横付け。それを父がやっている。 「よほど頭に来ているんだ。血が上っている。いやでも、社長のことだから……もしかして……」
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