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窮地を救ってもらった翔もやや愕然とした面持ちでスカイラインを見据えている。だけれどその眼に不信はない。信じている眼差し。
「父ちゃんは無線でなにか言っている?」
翔が首を振る。いま英児父にはランエボしか見えていないのだろう。ここで会ったが百年目、ランサーエボリューションと一対一のタイマン勝負、そんな気迫が走っている姿を見ているだけで伝わってくる。
「いや。社長は冷静だ」
翔が言い直した。
「見ろ。ぴったり横付けはしているけれど、幅寄せはしていない。本当にぴったり繋がれたようにランエボに合わせて走っている」
「……本当だ」
白と黒の二台は互いをトレースするように綺麗に並んで走っている。
「あれって、実際はすごく鬱陶しいんだ」
「わかる。なにをされるわけでもなくて、ただ真似されてくっついてくるだけで、無言のプレッシャーみたいなヤツだよね」
二人で意志を合わせてやるなら、息があって美しい走行に見える。だけれど、目の前の二台は敵対しているのに、息があったようにぴたりと美しい走行をしている。
意志を合わせていないのに、あれほど綺麗に見えるのは、ランエボに腕があるんじゃない。
「社長でなくちゃ、あれはきっとできない」
ランエボが抜こうとしたら英児父が同じ速度で息を合わせているように見せているだけ。すべては英児父の技――。
あれではランエボのドライバーも脅威を感じているだろうし、苛ついているはず。そうしてランエボを牽制してくれている。
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