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英児父のスカイラインが出現した途端、ランエボも翔のMR2でさえ次の動きを止められてしまっている。ここにいる三台の統率を司っているのはまさに英児父のスカイラインだった。
小鳥は目の前で悠然とかっ飛ばしているスカイラインを見て、ドキドキしていた。やっぱ父ちゃん、格好いい! いざというとき、うちの父ちゃんは本当に格好いい!
そこで翔が再び、耳元のインカムを抑えた。
「……はい、はい。もちろんです。やらせてください」
落ち着いた翔が父となにか話し合っている。
「もうこれは要らない。小鳥、持っていてくれ」
インカムを耳から取り去り、助手席にいる小鳥の膝の上へと放ってきた。集中したいのだろう。
いったいなにを父と決めたのか。小鳥はそのインカムを、入れ替わりで耳につけた。
「父ちゃん」
――小鳥か。
「父ちゃん。対向車線、危ないよ!」
――ダム湖の駐車場でこっちに下ってくる車が来る場合は、武智が報せてくれる仕組みになっている。
「武ちゃんも来ているの?」
――もちろん。清家の兄ちゃんのCR-Xも待っている。マコもノブも、みんな来ている。
龍星轟総出で待ちかまえていた瞬間。皆がそれぞれの役割を持って立ち向かっていることが小鳥にも通じてくる。
『小鳥、邪魔するなよ。訳あり関係を持つ男と男のケジメだ。それに、いまから翔がおまえの敵を討ってくれる。今度はしくじるなと伝えておけ』
言い終えると、目の前で並んで走っていたスカイラインがスピードを上げ、ランエボを抜かし対向車線から外れる。ランエボの目の前に滑り込んでも、そのままスピードを落とさずに、さっさと先へ走り去っていく。
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