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顧客の車を煽って自損を誘い、小鳥の愛車であるMR2に正面衝突、龍星轟従業員、慎のNSXにも体当たり。そこまでの奇行を重ねてきた白いランサーエボリューションXが、黒い龍と言われている英児父のスカイラインに遭遇すると恐れおののいて逃げていこうとしている。
「今度は俺が絶対に逃がさない」
それは全て『知り合いだった翔が原因』だったと判り、彼の目が冷たくも燃えている。
小鳥は黙って、彼の隣にいる。気持ちだけ寄り添い、彼と一緒にここにいる。
足早に逃げていこうとしたランサーエボリューションの背後を捕らえた。
もうすぐ頂上、ダム湖の駐車場。カーブはあとひとつ。
MR2のエンジン音がひときわ高く唸ると、ついに翔が反対車線に出る。さらにスピードをあげ、ぐんぐんと白いランエボに追いつき横に並ぼうとしている。
「こちらエンゼル。対向車線は大丈夫?」
小鳥は静かに補佐を務める。
『大丈夫だよ、小鳥。通過した車はいまのところナシ。タキさんもいま到着した。ここでみんなで待っている。何かあっても俺達もいるよ』
いつもの明るい武ちゃんの声が聞こえ、幾分かほっとした。
ついにエンゼルとランサーエボリューションが直線上りコースで横並びになる。
最後のカーブはエンゼルがアウトコース。インコースのランエボがスピードを落とす様子もなく、内回りのカーブを抜こうとしている。
翔がアクセルを強く踏む。……小鳥の足も何故か同じように踏み込んでいる、助手席で。
そう、ここ。ここで踏んで……、そう、並んだら……! 自分がハンドルを握っていたらこうする! 小鳥が思う運転を、翔もシンクロするようにやってくれている。
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