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私たち、やっぱりひとつなんだ。
この二年、ほんとうに沢山の夜を車を通して過ごしてきた。
彼の愛車が、いまは私の愛車。そしていま、そんな彼とその車に乗って。夜空の下、こんな嫌なこともあるけれど、でも、ふたりで向こうに行こうって……。行こうって……。そんな気持ちもきっと一緒なんだと小鳥は思う。
小鳥の胸が熱くなるように、MR2のエンジンも最高潮に熱され、ここいちばんの唸り声をあげる。
内回りを一足先に抜けていこうとするランエボの先端、大回りのカーブをぶっちぎるMR2が捕らえる。
――並んだ! けっこうなスピード。だけれどハンドルを握っている翔の目線も、ハンドルを回す手と腕もぶれていない。アクセルを踏む長い足にも躊躇いがない。このカーブは、この角度の目線、この数値のスピード、この回転率。精密に計算をはじき出すロボットのような顔と姿。
ここ一瞬で冴えわたる翔の運転。また小鳥はドキドキしていた。これが翔兄の素敵な姿。父ちゃんが動物みたいな勘でだけでビシバシとかっとばしていくのも、どこかにあっという間にさらわれるようでドキドキしてたまらなくなる。でも翔は父とは正反対。状況に合わせた理知的で緻密な判断で寸分違いなく打ち出された操縦をする。そこにはすごいという感動がある。
小鳥のハートも、エンゼルのエンジンもヒートアップさせても、翔は冷ややかに静か。その目線が捕らえたとおりに、ついにエンゼルがランサーエボリューションをカーブの終点で抜いた!
もう頂上が目の前。白のランエボを振り切ったMR2はすぐさま車線変更、ランサーエボリューションの目の前へと滑り込み前走位置を勝ち取った。
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