19.龍の子は、小鳥じゃない

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 そんな翔がしたことは、その大きな胸の中に小鳥を隠すように抱きしめ、瀬戸田に無抵抗に背中を向けたこと――。 「や、だっ。お兄ちゃん、危ないっ」  それでも小鳥の身体を包み込んで、ランエボの車体に押し付けて小鳥をその囲いから出そうとしない。  そのうちに『うっ』という彼の呻き声が小鳥の耳の側で何度か響いた。  拳だけじゃない。翔の身体が何度か小鳥の身体に強く押し付けられた。背が高いお兄ちゃんの胸の中にいて何が起きているかわからない。でも、小鳥は気がついた。蹴られている。お兄ちゃんが無抵抗になって背中を蹴られているんだ――と。 「やだ、翔兄、どいて! 離して、わたし、大丈夫だからっ」  小鳥をぎゅっと抱きしめて離してくれない翔の呻き声から微かに聞こえた言葉……。 「バカ、なにやってるんだ、このやんちゃ娘……。だから、だから、心配で、これからは、俺が、小鳥をちゃんと、う……うっ」  ランエボの男が『おまえのせいだ。おまえの女も酷い目に遭ってとうぜんだ。トウコさんを泣かせたバツだ』と狂ったように叫んでいて、大好きなお兄ちゃんを蹴って蹴って傷つけている。  でも狂った男の怒声なんて、もう聞こえないほど……。小鳥は自分を守ってくれる翔をそのまま抱き返した。  次に小鳥の中に沸いてきたのは、とてつもない怒り! 
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