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コイツ、やっぱキチガイ。ひどいよ。もの凄く腹が立つ。なんなのよ、あんたが何台もの車に迷惑をかけた理由って、つまり色恋沙汰だったわけ? それってお兄ちゃんをおびきよせるためにやっていたわけ? それだけのことで、幾人もの関係のないドライバーを巻き込んだわけ? 好きでもないランエボを使ってそれだけのことをやったわけ? 許せない!!
そんなヤツにお兄ちゃんがいいように傷つけられるだなんて、私が許さない!
翔を突き飛ばして、彼が自分のために無抵抗になる体制を変えようとした、その時。小鳥の目の前から、瀬戸田という悪魔がふっと消え去った。瞬く間に……。
え……、なにがおきたの?
やっと翔を突き放し広がった視界にみえたものに、小鳥は唖然とする。
そこにはさらに恐ろしい形相の男が瀬戸田を掴み上げ、誰もなにもいえないうちに、ガツンとぶっ飛ばしている姿が――。
「と、父ちゃん――」
翔と小鳥の目の前に、龍星轟のジャケットを羽織った大きな背中が立ちはだかっていた。
「こんのあほんだら! いいかげんにせーやっ」
ワイシャツの男が英児父の鉄拳にぶっとばされ、アスファルトに崩れ落ちる。頬を押さえ、殴りかかってきた相手をすぐに睨み返した。
「……殴ったな。訴えてもいいんだぞ!」
そっちだって殴ったじゃない! 私と、翔兄を――! 飛び出そうとしたら、また翔に抱き返され押さえられた。小さな小鳥がなにをするかもうわかりきって止めたとわかって、ひとまず小鳥も荒れた気持ちを収める。
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