2.お兄ちゃんが待ってる

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 前もって決められていた運転手の車に、お酒を飲んだメンバーが滞りなく乗ったのを見て、小鳥もひと息。自分もMR2へと向かった。  だが、小鳥は花梨を探した。彼女に翔とのことを報告しようかどうか迷っていて、ついにこの日になってしまった。  お開きの後、二人きりになったら、今度こそ、花梨ちゃんに報告しよう。五日前、ひとりで岬に行くと言った夜に、翔兄が追いかけてきてくれて、両想いになれたんだよ。それで、今夜……、初めて彼の部屋に行くんだけど……その、もしかして、あんなことになるんじゃないかと……。ねえ、花梨ちゃん、どうしたらいい。花梨ちゃんはどうだったの。恥ずかしいけれど、そう聞こうと決めていた。  だけれど、小鳥の背後、車のドアがバタリと閉まる音がした。  振り返ると、サブリーダーである勝部先輩のレガシィーツーリングワゴンの助手席に花梨が乗っているのを見てしまう。 「か、花梨ちゃん」  ここのところ、彼の隣にいる花梨を見ることが多い。他の女子メンバーには見られないよう、最後にふたりが乗り合わせているのを何度も見た。まるで小鳥には見られても平気とばかりに……。  郊外居酒屋の広い駐車場出口からバイパスへとその車が出て行く時、助手席の窓から彼女が笑顔で手を振っているのが見えた。手を振り返す前に、レガシィは車道へと消えていく。小鳥は最後にひとり残り、力んでいた肩を落とした。  どうして。花梨ちゃん。勝部先輩には、地元に彼女がいるじゃない。  しかも、小鳥は花梨が本当に好きな人を知っていた。だけどその人が振り向いてくれないことも……。そしてその人が花梨のハジメテの男性だとも聞かされている。
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