19.龍の子は、小鳥じゃない

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 くだらねえ。若いてめえらの、惚れた腫れただけのことで、どんだけの無関係の車を巻き込んで迷惑をかけやがったんだ――。小鳥と同じ怒りを携え、でも、ここでひと思いに感情任せに解決しようとしない。その気持ちはあれど、きちんと収める方法が先にある。まずはそれを踏まえてからだ――。そう言っているように聞こえた。  英児父はたったそれだけを告げると、翔と小鳥へと振り返る。そして小鳥と目が合う。あんなにヤバイほど怖い顔をしていたのに、親父さんが泣きそうな顔で小鳥を見ている。 「おまえ、ほんとうにどうしようもねえ娘だわ」  そういうと、翔の胸の中に抱きしめられているのに、大きな手を差し伸べて殴られた頬をつつんでくれる。 「あほか。琴子になんて言えばいいんだ。マジで。おまえ、俺の、龍の子かもしんねえから『龍子』て名前にすれば良かったなんて野郎共に何度も言われたけどよ、そんな逞しい願いを込めた名前にしなくてよかったわ。おまえは、かよわい小鳥ぐらいでちょうどいい」  それでもどうしてこんなことをしでかすかな。小鳥の顔を撫でて撫でて、龍の父ちゃんが泣きそうな声。 「帰るか、父ちゃんと」  その問いに、小鳥は戸惑った。  翔もちょっと困った顔をしている。  そう小鳥はいま、彼と一緒にいたい。そして彼も……? 「翔兄に聞きたいことがあるから、まだ帰れない」  そう言うと、英児父が怒るか驚くかと思ったけれど、なにもかもわかりきった顔で頷いてくれたから、小鳥のほうが驚いた。 「翔、頼むわ」 「はい」  目の前からも離れていく。少し離れたところから見守っている龍星轟の仲間とスカイラインのところへと去っていく。
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