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「やだ、もう……私。やっぱり子供っぽいね。変に勘ぐって……」
「いや。俺も小鳥に甘えていたかな。多くを言わなくても、いつも俺のことわかってくれているもんだから、改めて説明しようだなんてちっとも考えていなかった」
それまで小鳥を大きく包み込んでくれていたお兄ちゃんが、がっくりと項垂れる。小鳥を胸から離し、ソファーの背にもたれ額を抱えていた。
「……甘えてなんかいないよ。でも、やっぱり私、お兄ちゃん達の長い付き合いの関係についていけないよ」
「それはお互い様だろう。俺だって、小鳥の高校時代、大学の若い者同士のつきあいの輪は、小鳥のもの、俺が入っていけるものではないと思っているよ」
小鳥も付き合いが多い。きっとそれは翔以上だと思う。だけれど、翔は相談も心配もしてはくれるけれど、そんな小鳥の世界に首を突っ込んだり大人ぶった意見を押し付けたりしたことはない。
だから。だから。小鳥も彼の昔のことには首を突っ込んではいけない……。そう思って……。過去は過去、いま彼と一緒にいるのは自分なんだから、いまの二人を大事にすればいいだけで……。そう思っていたから。
「そこのカーテン。小鳥ならどう思う?」
小鳥の苛みなどお構いなしに、唐突に翔がそんなことを言いだした。
いったい何を考えているのだろう? オトナの彼の意図がわからない。でも小鳥はソファーの正面にあるカーテンを見つめる。
ソファーと合わせたシックなブラウン一色のカーテン。
「ソファーと合っているよね」
「俺が初めて選んだカーテンだ」
「ふーん」
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