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それが? と、話の腰を折って話題を変える戦法なのかと、なにを考えているのか解らない翔を確かめた。でも彼は余裕の微笑みで、小鳥の目をしっかりと見つめ返す。
「それまでは、すっごい花柄のカーテンで、レースカーテンもフリフリの白い乙女なカーテンだった」
ん? なんか変な話になってきたと小鳥はつい顔をしかめた。つまりそのカーテンって瞳子さんがこの部屋のために選んでいたという話になる。
「前のソファーも真っ白なもので、キルティングのカバーがかけてあった。でもいま座っているこのソファーは、俺が二年前に買い換えたんだ」
翔は次々と部屋中のインテリアを指さし、あれはいつ買った。これはこう思って選んだ。と説明を始めた。いまふたりをほんのり包んでいる間接照明がいちばんのお気に入り。これはけっこう店を回って選んだと……。
最後、翔兄が指さしたのは、あのベッドルーム。
「ベッドもそう。あれは今年に入って買ったんだ」
また翔兄が小鳥をまっすぐに見つめる。もの凄い真顔……。
「もうすぐ、小鳥がこの部屋に来るだろうから……。大きなベッドに買い換えた」
驚き、小鳥はやっと翔を見上げる。
「学生の時に買ったシンプルで狭いパイプベッドのままだったんだ。俺も小鳥も背丈があるだろう。それはちょっと窮屈かなと思って。そろそろ寝心地の良いものも欲しかったから、この機会に選んだんだ」
「そうだったの……」
そして小鳥も翔がなにを言いたいのか、ようやくわかった。
彼はその人の名を言わなかったけれど、小鳥には通じた。
通じたとおりのことを、翔が話し始める。
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