20.オマエのための部屋

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 優しい弾力がある男の唇を、小鳥から愛した。許しを得たかのように、彼の舌先が小鳥の中に入ってくる。  熱い舌先が、口の中でしみた。  それでも翔は我を忘れたように奥まで愛してくれる。  小鳥でさえ血の味を感じている。きっと彼も感じている。それでも彼はもう『大丈夫か』とか『嫌ならやめる』なんて……それまで必ずあった断りも挟んでこなくなった。  きっと今夜はもう止まらない。  海岸線で肌を愛されたことも。峠でふたりでステアリングを握って走っているみたいだったシンクロも。そして血の味がするキス――。 「小鳥の今夜のこの味、俺は、ずっと忘れない」  俺のために滲んだこの血を――。  小鳥ももう怖くない。  なんであんなに怖がっていたのだろう? 彼のために、殴られてもかまわないと厭わず飛び込んでいけたのに。  彼に愛されているって、最初からわかっていたはずなのに。  大きな手が赤く腫れた頬を優しくなで、くちびるも熱くゆっくりと愛してくれている。  気持ちだけじゃない。肌が触れるってことも大事。  頭だけでも、気持ちだけでも、理解できることじゃない。  小鳥の本能が言う。肌に刻みつけることでしかわからない感覚があるって――。  彼の肌の匂い、もう知っている。髪の匂いだって。さらさらした肌の優しさも、汗を滲ませていると急に男ぽい熱い肌に変わった時とかすごく好き……。  いま彼の首もとから、そんな男になった時の匂いがする。 「しょ、翔兄……。もうなんにも怖くないよ、私。好きなの、愛して……。私もうんと愛したい……」
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