20.オマエのための部屋

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 まだ愛し方なんて知らない。『愛している』なんて簡単に言えない。でも。彼に愛されたい気持ちも、彼を愛し返したい気持ちも溢れている。  息が苦しくなってふいにつぶやくと、やっと彼が小鳥から離れ立ち上がった。 「シャワーを浴びてくる」  力が抜けて座ったままの小鳥を、翔はいつにない険しさで見下ろしてる。怖いくらいの眼差しに、小鳥は彼なりの覚悟を見た気がして静かにうなずいた。  そっと彼が奥へと消えていく。やがてシャワーの音。  もう緊張はない。でも胸はドキドキしている。  小鳥は立ち上がって、彼のベッドルームの入り口でその部屋を見渡した。  大きなベッドに無地のシンプルなシーツにベッドカバー。男らしい雰囲気なのに、優しくて甘い匂い。そう、よく馴染んでいる香りに、小鳥はほっと胸を撫で下ろし微笑むことができていた。  そっと瞼を閉じ、小鳥は心の中で一枚一枚脱いで素肌になろうとしていた。  その気持ちはもう子供ではなかった。  あの人の肌に触れたい。触れて欲しい。  そう心から熱く切望する『女性』だった。 「待ってる。小鳥も行ってこいよ」  バスタオルを腰にまいただけの彼が濡れ髪で出てきたので、そこはさすがに小鳥はドキリとしてしまう。  彼も既に『男』だった。
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